2008年07月04日

狩られる家族

天童 荒太という作家がいる。
何年か前に「永遠の仔」という作品を発表し、
これはドラマ化もした。
私は、その2冊(上下巻)を読んで、
深く感動したし、やるせない気持ちにもなったのだが、

今回読んだ、この作品もまた、
いろいろ考えさせられ、読後はどーんと沈んでしまった。

「家族狩り」という以前に出版したものを元に、
さらに多くを書き直し書き足し、
5冊の文庫版として出版されたもの。

幻世(まぼろよ)の祈り―家族狩り〈第1部〉 (新潮文庫)幻世(まぼろよ)の祈り―家族狩り〈第1部〉 (新潮文庫)
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] 幻世(まぼろよ)の祈り―家族狩り〈第1部〉 (新潮文庫)
[著者] 天童 荒太
[種類] 文庫
[発売日] 2004-01
[出版社] 新..
>>Seesaa ショッピングで買う







ここで書かれるのは、

「家族」

「社会とのかかわり」

そして「どう生きるか」






家庭を舞台にした、多くの殺人事件や暴力事件を追いながら、
それぞれの登場人物たちの「家族」との関係、
自分の理想とする生き方とそれに反する社会の中での葛藤など、
心理描写を細かく描いていく。




刑事である父は、家族を見返らず、結果息子は非行に走り、死ぬ。
それを非難しながら生きていく娘。
精神を病む妻。
その父が「家族」を信じながら、事件を追いかけていく。



厳格な両親に、欲を持つことの罪深さを刷り込まれて育った教師は、
厭世的な生き方を続けてきたが、
隣で起こった殺人に気付かなかった罪悪感を抱える。
何もできなかったのか?何もしなかったのではないのか?



高学歴のエリートサラリーマンの家庭。
幸せそうに見えるこの「家族」も悲鳴を上げている。
何でも言うことを聞いていたはずの娘が壊れる。
私の人生はこんなはずじゃなかった、と言う妻。



学歴もなく、仕事もなく、アルコールに走り、
幼い娘に暴力を振るう父。
もうこの娘しか、自分にはない。でも手を挙げてしまう。

暴力を受けても、大好きなお父さん。
お父さんと引き離そうとする、警察や児童相談所の職員がにくい。




ある日見つけた羽蟻が、知らないうちに、
このどんとしっかり安定しているように見える家を蝕んでいくように、
どの「家族」も、少しずつ蝕まれている。

なにに?
社会に?

他者の犠牲の上に成り立つ生活

世界にはたくさんの死があふれているのに

偏見

戦争
暴力
それは必要悪?

違う。
でも、なにができるのだろう?






「レストランで、おいしいものを食べようとする。
 そのお前の欲のために、どれだけの犠牲があったと思う?
 それは、先住民から搾取した土地で、重機で森を壊し、
 化学物質を振りまいて作った作物を、
 排気ガスを振りまいて運んできた食べ物だぞ」

「欲望を満たすために、他者を犠牲にし、
 その結果が、地球を、人間を、
 自分たち自身を死に追いやっているのだ」





登場人物たちが発する、極端とも思える発言を、
私は、否定できない。

「そういった悪を反省して、ボランティアをしたり、
 福祉に力を注いでいる人たちだっているのでは?」

「では、それが戦争を止めているか?
 この格差社会をどうにかできるか?」






差別も偏見も、悪いことだってわかっている。
戦争も暴力も、悪いことだってわかっている。

なのに、なぜ止められないのだろう。






「家族」とはなんだろう。
「普通」とはなんだろう。
「幸せ」とはなんだろう。

わかっているつもりでいたことが、
わからなくなりそうだ。

どうしたらいいのか、自分の考えがあったはずなのに、
わからなくなりそうだ。






でも、考えなくてはいけない。
想像しなくてはいけない。

もっともっと。








その2へ→
posted by おくさま at 19:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 今日のごきげん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。